コラム 三寒四温

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アメリカン倶楽部

「シェフズテーブル」。

最近よく耳にするレストラン用語ですが、その名の通りレストランのキッチン内に用意されたテーブルのことで、味だけでなくライブ感も楽しめる食事スタイルです。
 
40年ほど前のことです。港区麻布台のロシア大使館の裏手にある重厚な佇まいの会員制倶楽部「東京アメリカン倶楽部」(通称:TAC)内のレストランに、第一屋製パンの細貝理栄さんにご招待いただきました。日曜日のシャンパン・ブランチという新鮮でセレブリティー感あふれるひとときに、私は緊張のあまりキョロキョロソワソワと落ち着かず、額には汗していた事を思い出します。

その時以来「僕は必ずここのメンバーになる」と強く決心しました。

プール、ボーリング場、スカッシュコート、バスケットボールコート、図書館、ジムとスパ施設、そして個性豊かな5つのレストランに、500人収容可能なパーティー用のボールルーム等々。トイレには自動の靴磨き機が備えられ、手洗い用の1枚ずつ使用するハンドタオルは手編みの竹カゴにさりげなく置かれています。パーキングはすべてバレットで駐車時の煩わしさがありません。館内すべての表記は英語で、周りを見渡せばほとんどが外国人の方で日本人の姿はまれにしか目にしませんでした。

それから四半世紀ほど経たのちの15年ほど前、運命的に私は会員になれました。細貝ファミリーとは、今では時折お互いの孫を連れてプールでお会いしたりして、会員ライフをエンジョイしています。

TACの3階には、1万本を超える世界中のワインがコレクションされているステーキハウス「チョップス」があります。希少なアメリカ産ブラックアンガスビーフのTボーン(約2パウンド)が私のおすすめなのですが、ここのキッチン内にシェフズテーブルがあります。客席から見渡せるオープンキッチンはそれなりに躍動感があり、繁盛店で厨房を見ながら食事をするのも楽しいですが、キッチンの中はもっと“すごい!”のです。

飛び交う係の声、オーダーの確認、シェフによるソースの味見、客のアレルギーに対応したメニューの確認を行うスタッフが立ったままミーティングしています。次々に出される料理、早口の英語は大声で厨房の隅々まで響き渡り、もちろんシェフズテーブルにも筒抜けです。楽しい! 特に食べるペースに合わせて音や香り、そして作り立ての究極の料理がもてなされます。

作り手が見える、香りを感じる。でき上がりまでの全てを目にすることができる「オペレーションの確立」を、ベーカリーの調理と販売にも生かすことができたら面白いですね。
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グリッシーニ

先日、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」を観ていたら、熾烈な販売合戦を繰り広げているアサヒビールとキリンビールが今まで独自に行っていた北陸地方への配送を“協力”してコストを下げる取り組みを開始したというニュースを取り上げていました。協力しながら競い合う“協争”が、製パン業界も含めて今後も広がりを見せる事になるのでしょうか。

“協争”とくれば“協奏”を思い浮かべます。

お気に入りのチャイコフスキー作曲「バイオリン協奏曲」が突然聴きたくなりました。ユーチューブではムターのヴァイオリンでベルリン・フィルをカラヤンが指揮する映像が投稿されているので時おりイヤフォンでの大音量で聴き入ります。ムターの超絶技巧によるヴァイオリンは、ときには荒々しく、ときには包み込むように、ときには鋭く、ときには優しい旋律を奏でます。

そして、何といってもカラヤンの指揮ぶりは素晴らしい! 
本当にブラボー! ゾクゾク、ワクワクしてきます。実は私40年ほど前にカラヤンとベルリン・フィルの来日公演を杉並にある「普門館ホール」にて一度だけ鑑賞した経験があるのです。

まさに奇跡のプラチナチケットをどうやって入手し、誰と行ったのか、演目は何だったのか、記憶が曖昧なのですが、当時の雰囲気が目を閉じると一瞬だけ脳裏に蘇ります。それは演奏が終わり、カラヤンが観客席へ振り返る姿です。満場の観客がスタンディングオベーションでブラボー! と称え、大きな、とても大きな拍手をステージへと届けます。客席に一礼したカラヤンは堂々とした姿勢で舞台袖へと消えて行きました。そして、アンコールに姿を見せる事はありませんでした。

ひときわ冷え込んだ今朝もまた、熱いコーヒーを飲みながらPC画面の中で躍動するカラヤンの勇姿を目の前にして、ムターとベルリン・フィルが奏でるチャイコフスキーに聴き入ります。

あっ! グリッシーニがあるじゃないですか!

デスクの隅に、見事な長さで焼かれた10本ほどのグリッシーニの存在に気づいた私は、思わず手に取りカラヤンを真似てオケの指揮を始めました。このグリッシーニ、実は2日前に日本パン技術研究所を訪れた際に応対してくれた、とてもチャーミングな職員さんからのいただき物。

「昨日の実技セミナーで焼いたものです。どうぞ」

嬉しいですね。帰宅後、超薄切りのハモンセラーノを巻いてワインと共にいただいたものが残っていたのです。

程よい弓反りで長めの“タクト”はポリポリと口の中へ、曲のクライマックスでちょうどいい長さに残った“タクト”。イヤフォンから流れる、優雅で美しい旋律が私を熱く高揚させます。さあ、フィナーレです! 

・・・あれ、タクトは何処?

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ランチパック

1月3連休明け、10日朝の外気温は7度でしたが、雲一つない青空に照り付ける太陽のおかげで寒さは感じません。レースのカーテンが引かれたガラス窓越しの桜の枝には蕾がプックリと色染め、木漏れ日が優しい日差しとなって、顔を温めてくれます。

「パソコンの画面が見づらいなあ」。
日光浴気分での仕事は連休の疲れも手伝ってか睡魔に襲われます。これがまた気持ちいいのです。ウトウトしながらメールをチェックしていると私と気の合う、立ち喰い蕎麦の大好きな友人から

「今朝はちくわ天蕎麦です。ちくわ、最高!」の一報。ニャロメ!

うらやましい限りです。というのも自称“立ち喰い蕎麦評論家”の私の家の近くには、立ち喰い蕎麦屋どころか朝食メニューで蕎麦を出すファミレスすらありません。

そういえば、マルキの修ちゃんが年末に届けてくれた生蕎麦が1袋、冷蔵庫に残っていたのを思い出して賞味期限をチェックしてみると、見事に三が日で切れていました。しかし袋の中の手粉の状態を見る限り、まだまだ大丈夫! という訳で、野菜庫からレンコン、ゴボウ、ニンジンを取り出し、昼は野菜天ぷらせいろをいただくことにしました。野菜の天ぷらは冷めてもラップをしておけば2~3日程度の冷蔵庫保存はOK、常温にして生醤油をかけて食べると、ご飯に良く合います。多めに揚げるので数日は天ぷらご飯が続きますが、飽きることはありません。

夕刻、小腹が空いたので台所を捜索したところ『たまごのランチパック』を発見! これ、家内が好きなんです。

ここで閃いたのが“たまごランチパックの丸ごと揚げ”。 180℃に熱した油で約2分、こんがりと揚がったランチパックの油を切って、ハホッハホッとばかりにかぶりつくと「これ、いいね!」。家内を呼ぶとおやつを勝手に使ったので少し怒られましたが、無事「おいしい!」をいただきました。

我ながら良い出来だと食べながら、似た者がいるかとネット検索してみると……やはりいるんですね、チャレンジャーが。中でも傑作だったのがランチパックを食パンで挟んだ、その名も

「逆ランチパック」

発想がユニークですね。さて、昼に茹でた蕎麦は一掴みだけ残しておいたので、油で揚げて塩を振り、焼酎のアテにしたのは言うまでもございません。
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脳の反応

年末から年始にかけて大した運動もせずにグタグタとTV桟敷で横になり、煎餅などをかじりながら、飲んで食べていたら、あっ!という間の仕事始め、なんて事ではありませんでしたか?

…実は私のことなんです。

人の脳は頭の中で想像すると勝手に生理機能まで反応するそうですが、

 (今は何もしたくない)
 (眠いなー)
 (腹減ったー)

こんなことを考えると、脳はとっさに反応するのですね。しかしそんな反応を覆すのが“理性”なのでしょう。“イメージする力”と現実を、脳は区別することができませんから。

「お正月は何をされていましたか?」

これ、仕事始めの日によく交わされるフレーズですね。

「グタグタして過ごしていましたよ」

と返ってくる。すると、私の脳は瞬時に

「リラックスが一番ですよね」

と反応します。これってリラックスだったのかな?
いやいやただのグータラだよ、しかし言葉には出せません。
反応は「調子の良い奴だな」。そんな反応をする自分は本当に嫌な奴です。

どうして私はいつもこうなのでしょうか。今年こそは自分を変えたい、いい人になりたいと思っても、いつも行動が伴いませんでした。

そんな私は

「今年こそ、自分は自分でいいんだ」

と言い聞かせることにしました。

「だれかの役に立っている」
「だれかに自分は支えられている」

そう思って今年は創立70周年の企画をやり遂げようと決心しました。

ひとつの区切りをつけて自分を変えることなく、自分は自分でやれるところまで努力する、この“変革”を受けて、私の脳はどのようにして反応し、言葉と行動をサプライズしてくれるのでしょうか。

  ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

じわじわと浸透している「モダニスト・キュイジーヌ」という調理スタイルが、ますます脚光を浴びそうです。それは「モレキュラー・ガストロノミー」という美食を楽しむための科学的な料理法のことなのですが、製パン業界でも大いに研究して、モダニスト・キュイジーヌすなわち現代の料理に生かして切磋琢磨していただきたいと思います。

…どうですか? これを読まれて皆様の脳はどのような反応をされましたか? 前衛的な調理スタイルは、必ずや食卓革命を引き起こす原動力となることは間違いありません。

脳の反応をコントロールする。いや、コントロールしなくても良い反応を導き出す理性を、ドラえもんのポケットから分け与えてもらいたいものです。
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弊社社長 菅田耕司のコラム


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