コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
速報製パン情報の定期購読お申し込みはこちらからどうぞ。

不思議な光景

 「これはサングリアとは言えないね!」赤坂のオイスターバーで、メニューに見つけた〝サングリア〟をピッチャーで注文したのですが「どうしてフルーツが入っていないのかしら」と家内。ひと口含むと、確かにフルーツの味がする赤ワインなのですが、合点がいきません。オレンジやリンゴの皮付きの、ぶつ切りがゴロゴロ入っているのがサングリアだと思っていたふたりは「これが当店のサングリアです」との答えに、顔を見合わせて唖然とした次第です。この時の一件が気になって以来、外食時はレストランのメニューで〝サングリア〟を見つけると、とりあえずグラスで一杯オーダーするのですが、どこのレストランでもフルーツそのものは入っていなかったのは残念でなりません。
 「南仏のアルルの町で飲んだ〝サングリア〟は衝撃的だったね」「石畳の迷路のような小路にポツンとたたずむ、小洒落た小さなレストラン」「軒先に座っていた老夫婦がグラスの中からオレンジを取り出して実を齧っていたわ」「赤く染まった皮は床下に捨てていたわね」「不思議な光景だったね」「興味がわいたから、隣に座って訊いたのよね。それ、何ですか? って」……という訳で、私達もさっそくいただきました。口広の少し大きめで普通のコップの中には赤ワインがなみなみと注がれていて、皮付きのオレンジとリンゴの切り実がグラスいっぱいに詰まっています。まずはひと口飲んで、リンゴから齧ってみましょう。「実まで真っ赤っかだよ! ウン、おいしいね」。フルーツはワインを吸って、ワインは果実のエキスを吸って「マッチングベター!」「あまりのおいしさにマイッチング・マチコ先生だねー」「もー、古いジョークはやめてよ。でも本当においしいわ」「店も客も石畳も景色も、そしてサングリアも。すべて申し分ないわー」
 帰国してからも、たびたび家で作り置きして楽しんでいましたが、日本のレストランで出されるサングリアはちょっと違うみたいですね。果物を絞ったり、砂糖を入れるとか、ブランデーを入れたりもするみたいです。レシピはそれぞれですね。ちなみにその後、赤坂のオイスターバーに私が作った特製サングリアを持って行ったところ、さっそく翌日からメニューにとりいれてくれました。
 「素直でいいね!」「この店、流行るかもよー」
 「もう、流行ってまーす」

ボヌール・シュクレ

 次々と出てくるホールセールの菓子パン新製品の中でもロングヒット商品が誕生するのは、ごくまれなことです。
 メガヒット中のパスコの「十勝バタースティック」は稀有の例ですが製パン各社の企業努力による数多くのヒット商品が誕生しているのも事実です。そんな折、第一屋製パンの2013年秋の新商品「スイートポテト蒸しケーキ」が届いたので試食してみると、びっくりしました。まず包装紙を開けると、あまーい香りが鼻腔をくすぐり、手にすればふわふわなその蒸しケーキは、そっとふれただけなのに、かよわく身ばなれして、口に含めばまさに秋の味覚の王様の味です!その蒸しケーキは心地よく舌にとけてアロマを漂わせながら消えてなくなりました。Bonheur Sucré!(ボヌール・シュクレ!)その菓子パンを包む袋の裏にはフランス語で「幸せ」「砂糖」という意味が書いてあります。さらに「一口で甘く幸せな気持ちになるように」との思いを込めました、と締めくくられていました。開発担当者のいつわらざる思いは、食べてみた人なら誰しもが感じることでしょう。
 本当にひとくちで、あまーく幸せな気分になるもんなんですねー。しかもその甘さはしつこくなく嫌味のないスイートアロマの麝香を放つ、ちょっとほっとおけない〝小悪魔〟な新商品でした。もしかして、ロングヒット商品の予感が……。
次の日、一通のFAXが届きました。細貝理栄社長は代表取締役会長に、代表取締役社長には門脇宜人氏が就任とのリリースです。
 一枚のリリースに、万感、色々な思いが錯綜しますが、ここはひとつ新体制にボヌール・シュクレ!

一人さんま

暑くて長ーい夏から一転、秋の気配と共に、大振りのさんまが魚屋の店頭に銀鱗を輝かせています。〝さんま〟と言えば……。

あはれ 秋風よ 情(こころ)あらば伝えてよ
男ありて 今日の夕餉(ゆふげ)に ひとり
さんまを 食ひて 思いにふける と。

高名な詩人、佐藤春夫の「秋刀魚の歌」の出だしの一節です。谷崎潤一郎の妻、千代を愛してしまった佐藤春夫の切ない思いがつづられたこの歌の最期には、誰もが知っている有名な一節があります。

さんま さんま
さんま 苦いか 塩つぱいか
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや

 未だかなわぬ思いに涙する純な、真っすぐな心情が伝わってきますね。その後、春夫は谷崎から千代をゆずり受けて結婚する事になるのであります。この詩にはふかーい作者の心情を一尾のさんまが語ります。失恋の涙がさんまにしたたり落ちる光景は、ちょっとなさけない気もしますが、さすがに詩人です。うまい味付けではありませんか。
 家内が女子会の満月の夜、夕餉にひとり、酒の肴にさんまを食ひて思いにふけりました。さんまのワタには清酒が合いますね。キリリと冷えた吉乃川がたまりません。「のんびりするなー。一人さんまも中々いいぞ。それにしても帰りが遅いな」。
 歳を重ねて涙する事が最近多くなった気がします。淋しい事も悲しい事もこれからもたくさん体験することでしょう。ですから〝一人さんま〟は時たまが良いのかもしれません。

弊社社長 菅田耕司のコラム


記事を検索
カレンダー
09 | 2013/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

管理者用