コラム 三寒四温

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てにおは

 正しい文章を書くのはとても難しい事です。私の場合、原稿は初稿から3回、4回と読み直し気付いた間違いを正して仕上げるのですが、これでもまだ物足りない。校了後も、印刷されて読者の元へ送付されるタイミング(何の意味もないのですが)を見計らって読み返し「あぁー!」と、いくつもの間違いに気づくのです。その時の恥ずかしさといったら何とも情けなくなる始末。「この文章では伝わりづらいな」と、後の祭りに、唇を噛むばかりです。

 私の祖父が残した“書”の掛け軸は虫喰いで広げるのにも往生するので、専門家の先生に鑑定してもらった事もありません。ついこの間も約10年振りに虫干しを兼ねて恐るおそる広げてみたのですが、達筆とあまりの虫喰いに何が書かれているのか皆目見当がつきませんでした。“書道”とはまず筆跡、そしていつの時代に誰が、何の目的で書いたのかが重要だと教わった事がありますが、「そんなことより、いかに価値があるかだろう」としか頭に浮かばないのは“なんでも鑑定団”に相当感化されている証ですね。そんな煩悩を振り払って巻物を繁々と見れば、達筆な墨跡に圧倒されるばかりで、今回も書家の名どころか年代すら判らぬまま虫喰いの箇所を破らぬよう慎重に巻き返しました。ところでまさかの校正は?…ある訳はありませんね。大切に先祖代々受け継がれてきた我が家のただ一つの家宝? の意味は、知らずに今後も受け継がれていくのが良策かもしれません。

 現代の、巷に氾濫する文章や言葉を見聞きすれば“書”や“書道”を大事にしていた先達はどんな気持ちになるのでしょうか? ましてやTV中継される国会での予算委員会等における答弁などは意味不明かつ理解に苦しむ言葉なのですが、文章として一つひとつ慎重に読み解けば「なるほど」と膝を打つ「てにおは」を駆使した“上手な言葉”として生かされてくるから不思議です。言葉って、奥が深い!

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 和歌山の友人から、会社宛てにおいしそうな“みかん”が贈られてきました。「なつみ」という品種だそうで、箱を開けてみると小ぶりなみかんがぎっしり詰まっています。早速ひとつ味見をしてみましょう。

 皮はネーブルみたいでみかんらしくなく、しっかりと実が皮についています。袋ごと半分をかぶりつきます。「おっ、ナンナノダこの甘さは!」思わず声を上げる驚きの甘さです。春に出回る甘い柑橘類には“せとか”や“はるか”がありますが、それらを遥かに超える程の甘さは今までに味わった事のない食感です。これはもうサングリアを作るしかないでしょう!「これは面白いね」という訳で我が家のデイリーワイン、カリフォルニア産のレッドウッド2012年、カベルネ・ソーヴィニヨンで作ります。ちなみにこの赤ワインは近所の酒屋で1本680円です。冷やして飲むスタイルのこの赤ワイン、本当にお手頃価格でしょ? そして先週、佐賀の友人からいただいたイノシシのフィレ肉は簡易燻製器“いぶす君”でスモークイノシシにしてみました。やっぱり私は好きなんです、こういうひと手間が。共に一晩冷蔵庫で寝かさなければなりませんが、ともあれ明日の晩酌が楽しみでなりません。

 ところで“甘い”は“旨い”という事なんですね。テレビでよく見る光景なんですが、料理人が野菜畑で引き抜いたばかりの大根をかじって「甘いですねー」とコメントがかえってきます。横では農家の方がニコニコしている、あの風景です。カブもセロリもキュウリも然り、「甘いですねー」の決め台詞にお茶の間の視聴者も引き込まれますね、「あーおいしそう」って。私は思います。新鮮な野菜は〝旨い〟から〝甘い〟のだと。それは砂糖のような甘さではなく舌で感じた瞬間に爽やかな感じの「甘さの旨さ」たる所以ではないでしょうか。今は糖度ばかり競っているトマトなどもそうですが、昔ながらのアオ臭さも捨てがたい味覚の一つでしょう。

 春の山菜たちがいろいろと出てきました。苦味の中にある爽やかな一瞬の甘さが苦味を引き立ててくれます。どんな食べものに対しても、好き心と面白がる気持ちを胸いっぱいにふくらませて日常を過ごすのもまた良いものだと思います。

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 佐賀県に住む私の友人から、冷凍便で段ボール箱が2つ届きました。ラベルを見て、「イノシシだ、これ全部かな」。段ボール箱を開けてみると中には約10キロくらいの肉が各部位ごとに小分けされてラップが施され、いずれもカチンカチンに凍っています。

「彼はよく言ってたんだ。“イノシシは若太りの牝に限る”って」
「これ、みんなそうなの?」
「こだわりの猟師だからね。うちにはいい加減なものは送ってこないよ。とりあえずフィレを一本塩釜で焼いてみようか?」
「焦げ焦げのBBQ! 私、あの焦げた肉が好きなの」

 という訳で小さ目の2本をBBQ用に解凍して、調理にとりかかりました。

 佐賀県特定鳥獣保護管理計画による駆除のため、狩猟で得た鳥獣は全て狩猟者のものであるらしい。でもなんで保護ってついているのか理解に苦しむのですが。調査捕鯨と同じような考えならば私もわかります。「全部とっちゃダメよ」とか、TPPで言うと“閣僚によるさらなる継続審議”みたいな玉虫色なことって周りにはたくさんありますね。

 ともあれオーブンの予熱はそろそろだし、BBQを始めるとしましょう。と、そこで家内が

「この間“さぬきや”でやっちゃん(マスター)が出してくれたコンニャクとゴボウの燻製、覚えてる?」
「驚いたね、コンニャクはノーベル賞ものの味だったよ」
「うちでも燻製作れないかしら」

 それでは得意のアマゾンネットで調査開始。すぐに
「“いぶす君”発見!」
「本体2980円・さくらのチップ380円」
「安いんだねー」
「ホースノンでスモークするのね」
「得意の特急オーダーだい!」

 ということで明日土曜日の朝には“いぶす君”ワンセットが我が家にやってきます。

「日曜日が待ち遠しいわ」
「ところでオーブンの中はどうかな」
「ワー、焦げてる焦げてるわ」。

 すでに葉桜となった老木の隣の牡丹の花はほとんど落ちて、家の中ではボタン料理に花が咲きます。ボタン肉をのせた宅急便の旨い前線が我が家まで北上してきました。変わって庭一面に咲き誇るのは、つつじ… それとも、さつき? 実はどちらも同じ花らしいのです。どう呼べばよいでしょう?

「だったら英語の“アザレア”の方が響きがいいわね」
「なるほど! それじゃあ、これから我が家ではアザレアと呼ぶことにしよう」

 呼び方を変えるだけで、見慣れた風景も少し新鮮に見えてくるから不思議なものですね。

ひと手間

 今の時期のタケノコご飯はおいしいですねー。我が家のレシピは米一合にタケノコ1本、みじん切りにした油揚げも米一合に対して1枚、味付けは酒と醤油と塩だけです。五合も炊くと、炊き上がりの釜を混ぜるのがひと苦労なんです。なにせ具がやたら多くて、中々ご飯までしゃもじが到達しません。しかも厚切りのタケノコがゴロゴロと賑やかなので、平らな大きい寿司桶に入れて混ぜる始末なのです。ちょいとタケノコをつまんでの試食はサクサク~ッと、もう堪らないくらいの食感で、一緒について来ちゃった米粒と油揚げがいい感じで、そしてこの塩梅の良さ! 言う事なし。今日も満点の出来、いや炊き上がりです。

 私は30歳くらいの頃に料理に目覚めました。初めての料理が、このタケノコごはんだったんです。料理好きの友人との共同作業です。その時、友人曰く

「茹でたタケノコはコンクリートの上で一晩放置するんだよ」
「エッ!?な、なんで?」
「エグみが取れるらしい。理由は知らないけど」

 という事で一晩コンクリートブロックの上で寝かせてから調理して炊いたタケノコご飯のおいしかったのなんのって。理由は未だ解明されていませんが、これが俗に言う“ひと手間”という事なんでしょうか。現在でもこのひと手間は続けています。ひと手間かけると言えば、私にとって料理で妥協できない事、それは「“おかか”は削り節で削る」という事。袋もののおかかにも上質な、味の良いものがたくさんありますが、ひとつくらいはこだわりがあっても良いでしょう。シャ・シャ・シャと心地良い音をかもし出す木屋製の削り器で削るかつお節、楽しいですよ。そしてとにかく新鮮だからおいしい。

 子供の頃、早朝の台所から聞こえてくるかつお節を削る音。そう、それはお袋の味の音です。日本の味の原点のひとつですね。炊きたてのご飯の上にたっぷりと削りたてのおかかをのせて醤油をまわしかけて一気にかっ込む。たまりませんねー。ご飯に合うのだからパンにはどうでしょうか? 日本人の味の原点の食材のひとつ、かつお節で何か“ひと手間”かければ、とんでもないヒット商品が生まれる予感がしませんか?

弊社社長 菅田耕司のコラム


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