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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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高級(らしき)食パン!?

最近、世の中は「高級食パンブーム」らしいですね。ワイドショーをはじめとするマスコミが煽っている感が否めませんが、目先の流行に惹かれて参入する異業種の戦略といった所でしょうか。

そのガイド役なのかベーカリーコーディネーターとかフードジャーナリストという方々をTVの特番などで度々お見かけします。TV番組の司会者が紹介する際に「ベーカリージャーナリストの○○先生です。先生は日本全国、1年に3,000個のパンを食べられています!」。そこで、オォーとどよめきの声。でもね、年間3,000個パンを食べたらパンの先生なのでしょうか?

紹介を受けて先生が話します。
「こちらの食パン専門店では2斤の焼き立て食パンが1本約1,000円で1日7,000本を売る、開店前から行列ができる人気店なんです」
するとロケ先のカメラに画面が切り替わり、店内に入るレポーターが従業員から説明を受けます。
「当店は食パン専門店で、一種類のみを生産販売しています」
「人気の秘密は何でしょう?」
「20種類にも及ぶ粉をブレンドして独自につくり上げたノウハウによって焼き上げます。ブレンド法は企業秘密ですが」

ふんふん、要はミックス粉ね。
「それでは焼き立ての食パンを手で裂いていただきましょう」
おいおい、ヤケドしないの? TV画面では裂かれた食パンから湯気が立ち上ります。いわゆる演出ですね。
「ワァー、おいしそうですね。皮はパリッと、中はもちっと!そして甘いですねー」
画面がスタジオに戻ります。
「今日は特別に3時間並んでも買えない事があるという、この食パンを試食いたしましょう」

待ってましたとゲスト陣がザワザワと色めき立ちます。
「今、生を食べていただきましたが、本当に甘くておいしいですね」
と司会者。さらに、
「トーストすると、さらに驚きのおいしさになるんです。では〇〇さん食べて下さい。マイクを口に近づけて」

カリッ、サクッ。

「なんて食感なの! こんな食パン、食べた事なーい」

……なんとも陳腐なやりとりです。

高級感を全面に押し出して希少性を煽って並ばせる、一種の催眠商法をTVや活字媒体で助長する。相変わらず日本人はこの方法に弱いようです。一時的な高級食パンブームは食パン普及の観点でいえば追い風かもしれませんが、大手製パンや有名リテイルの先駆者達がつくる食パン類には、企業努力がもたらす、一朝一夕では出せない“おいしさ”があります。しかしTVCMだけでは周知に限界があります。この“情報格差”を埋める発想が必要な時代なのでしょう。消費者が本質を見抜いて選び出せる状況が理想だと考えます。

二元論

噛みしめれば、パンの旨味が心を豊かにしてくれるバゲット。それはバゲットに限らず、全てのパンに使用する自家製パン酵母の使い方次第で大きく味わいが違ってきます。自然界には無数の酵母が存在すると言われており、市販されている「イースト」ももちろんパン用酵母である事に間違いはありませんが、ひとくくりに言えばパン生地を合理的かつ均一に発酵させる、人間が発見したパン酵母がイーストですね。「自家製酵母を使用しています」と売りにしているパン屋さんの商品を喜ぶ消費者の皆さん、どこまで理解しているのでしょうか。

ベーカリーの立場で言えば、イーストは安定した製品の大量生産に欠かせないものであり、さらに独自に開発された自家製酵母をミックスすれば、こだわりの発酵生地ができますね。そして、発酵方法は天文学的に存在し、利用法も取り扱う職人次第で味が決まるのです。もちろん主原料である、あらゆる種類のあらゆる方法で製粉された粉によっても、多彩な「味の顔」をつくり出します。

さらに水、塩、油脂、発酵時間、焼成温度と時間。「パンをつくる」という事はオーケストラの指揮者のようではありませんか。それぞれの主張を聞いて修正して組み合わせ、さらなる高みを目指す。しかし毎回、同じ音色(味)を出す事は不可能であると私は思うのです。要はどちらもお互いが“感動”する事が成功のキーポイントとなるでしょう。作り手と客、2つの原理を基礎とする「二元論」にまで話は及びます。

自然界が生み出す野生酵母が面白いですね。空気中に含まれているかもしれない神のみぞ知る新しいフレーバーが日常生活の周りに漂っているとしたら、日々進化し続ける豊かな食シーンをより一層楽しむためにも、見つけるしかないでしょう。いや、見つけ出してください。

生産者と消費者は善と悪、黒と白というような異質な2つの原理を新しいフレーバーで融合させて捉えられたら、と消費者の立場で夢想する……思いは尽きません。

パン業界の未来を描く筆を携えているのは、あなたかもしれません。

良き種まき

日本パン工業会の飯島延浩会長は2019年の年頭所感の結びに、次のように語られました。

製パン業界を取り巻く環境は厳しい状況が続いておりますが、このような時こそ製パン業界の一致協力を実現し、創意工夫により新たな価値を創出し、新たな食文化を生み出す時だと考えております。

「一致協力」。誰しもが業界の発展を願いつつも、企業間競争の高く厚い壁に阻まれ社会経済において長年にわたって実行される事は稀でした。

しかし、流通革命や製品メーカーと原材料メーカーのコラボ、同一店舗名による共販など徐々にではありますが浸透しつつある今日です。ただ如何せん利益追求のための競争により阻害されていることも依然として現実のようであります。だからこそ今、業界の「一致協力」の実現を呼びかける飯島会長の真意は、我が国が抱える重大な社会問題である少子化や環境問題、そして安心・安全という食品を扱う業界にとって最重要課題の解決のために最有力の“手段”だと確信します。私も「三協の精神」という思いを年頭所感に書かせていただきましたが、「新たな食文化を生み出す」という言葉を我々業界人は真摯に受けとめて実行・実現し進まなければならないでしょう。

飯島会長はクリスチャンビジネスマンとしても国内外で有名ですが、教会での礼拝前に聖書の一文・一節をわかりやすく自ら説明する「バイブルスタディ」にて昨年、山崎製パン社長としての見解を盛り込んで話されました。

しのぎを削る新商品の開発においては、常に新しいものを作るために、挑戦し続ける事、そして常にバージョンアップする努力が必要です。

製パン業界は主要原料である粉、油、イースト、そしてフラワーペースト等々、様々な業種が携わっています。「一致協力」。重く険しい難題を乗り越えるために大義を以って行動を起こさなければ進展は無いのです。

次の世代、そしてまた次の世代へと引き継がれる「良き種まき」を続け、良い実を残そうではありませんか。


弊社社長 菅田耕司のコラム


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