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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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〽酒は呑め呑め 呑むならば

新大久保駅前に「木鉢会」会員の「百人町 近江屋」があります。大のそば好きの私にとって新居近くにこのような名店を発見したのは嬉しい限り。もちろん味も間違いなしということで、週に1~2回ほど通っています。

木鉢会とは江戸以来の老舗そば店の三代目以上が集まって昭和33年に創設された会で、各のれん間の技術交流、そば打ち技術の伝承と向上を目的に結成されたとのことで、「そばの味」の乱れや、そばづくりの技術の断絶を防ぎながら、新しい時代の流れに対して会員が協力して精進することを目的としているのです。カオス的な状況で混乱している、とある業界にとっては少しばかり耳の痛い話ではありませんか?

ともあれ、そば屋に入ればとりあえずの熱燗に焼海苔、玉子焼き、鰊の燻製。締めはせいろをたぐって「おあいそ!」てな塩梅ですが、今宵はちょいと発見がありました。毎度見慣れている百人町 近江屋の徳利に、崩し文字で書かれている文字を読み進めれば、ナント……!

 〽酒は呑め呑め 呑むならば
  日本一(ひのもといち)の この槍を 
  呑み取るほどに 呑むならば
  これぞ真の黒田武士

「ねえママ、黒田節なのに最後の一節が “黒田武士” とあるよ。どうなってるのかねぇ」
「さあねェー」

自宅に戻ってPCで検索してみると、題名は「黒田節」ですが、歌詞は確かに “黒田武士” でした。理由をいまいち理解できなかったのですが、ダブルミーニングといったところでしょうか。それにしても、「思い込み」ってこういう事なんですね。歌詞を読まなければ一生 “クロ~ォダー節(ぶーし)”と唄っていた事でしょう。

翌日、改めて徳利をじっくり眺めるべく再び近江屋へ。家内と2本空けたあたりで、小さく黒田節をハモります。かくも “ちょうし” の良い2人なのでした。

ちなみに煮アサリのアテが旨い「室町砂場」、カレーそばを平らげてせいろで締める「神田まつや」、鴨南つけそばが絶品の「室町紅葉川」、濃い口の返しと天タネが特徴の「かんだやぶそば」などなど、木鉢メンバーには皆様ご存知の名店揃い、現在28店が名を連ねています。


親父越え

20107年の弊社創業70周年を記念して、父の遺産である日本パン・菓子新聞の歩みを縮刷版にて第1号より同紙に順次巻末掲載しています。敗戦直後の食糧難に際して製パン業界の発展を真に案じ、多方面から取材して自らペンを走らせた忌憚のない記事が並び、読み返すほどに「ここまで斬り込むか!」と気迫の込もった筆力に圧倒されます。

父は熱い人でした。しかし想い出はほとんど無いのです。なぜなら日本全国を飛び回って情報収集に努め、人脈を着々と築き上げることに追われ多忙を極める日々だったからです。そんな父との記憶といえば、正月の温泉旅行。毎年箱根の旅館に母と3人で訪れた事くらいが、幼少の頃からかすかに残る想い出です。

大学に入ってからはアルバイトで友人とともに新聞の購読料の集金で日本全国を旅行しました。この記憶が呼び起こされたのは、昨年偶然に連絡が取れた同級生から「そういえば、耕ちゃんと日本中を巡ったよなあ」と集金旅行の話を聞かされたからです。それは学生生活の4年間、夏休みのメインイベントでした。どのパン屋さんを訪ねてもあたたかく接していただき、購読料をいただきつつ食事までご馳走になりました。

卒業後は大阪支局で2年間勤務するも、父とのささいな諍いもあり、その4年後には勘当されて20年間にもおよぶ断絶がありました。おそらく、悪魔と共に過ごした “時” だったのでしょう。そして父が72歳の時、私は順天堂病院に入院している父と対面しました。

開け放たれた個室のベッドに座り主治医と話す父。私の姿を見るや、父は主治医に「私の自慢の息子ですよ、先生」と一言。ああ、私は許された!と感じたその10日後、父は天に召されました。

あとから知らされた話なのですが、神田の事務所からほど近くに “キタナトラン” といった風情の中華料理店がありまして、常連客だった父が亡くなる2日前に「ふらっと餃子を食べに来たよ」と店主から教えてもらいました。享年72歳の生涯、がんを患って天に召された父の遺伝子を私も引き継いだのですが、飛躍的な医療の進歩により、今年の12月には何とか親父越えができそうです。年齢だけですが。

バージニア・ウルフという詩人がこう書き記しています。

「何事も書き表されて、初めて起こった事となる」

ですから私はこう思うのです。父の残してくれた媒体を通じて「私と悪魔との出来事を書にしたためるために、私は有意義な “” を使おう」と。


ティラミス

「何、見てるの? どうかしたの?」

人は皆、不安や心配事が頭から離れない時、物思いにふけって焦点の定まらない目で一点をじいーっと見続ける事、ありますよね。それはどのような状況においても、です。

「ううん。何でもないよ」
「嘘おっしゃい、どうしたの?」
「だからー ……」

2人の視線はTV画面に注がれます。そして無言の時が流れます。数秒か数十秒か? 実際にはその程度の沈黙でしょうが、とても長く感じられました。空になっていたショットグラスにウイスキーを注ぐと、画面を直視していた家内が突然「チンドン、ブタポー」と訳の分からぬ奇声を発しました。「エッ? 何?」と尋ねると、「たわけた事を申すでない!」と自分のショットグラスをガラスのテーブルに “トン” と目も合わせずに置きました。注げ、ということですね。

「ハイハイ」と私。
「ハイは一度!」と家内。

このやりとりがあって、私の不安は払拭されました。心の隙間を読んで漫才のボケとツッコミのように一瞬で雰囲気を切り替える才能が家内にはあるのです。その後は他愛のない会話で酒が進みます。

「昨年、ローマ法王庁の駐日大使館で大司教のジョセフ大使にランチをご馳走になった時の事、覚えてる?」
「ああ、修道女さんがデザートに出してくれた自家製のティラミス、絶品だったね!」

実はこの時、TVで平成の流行をダイジェストで振り返る映像が流れており、その中でティラミスが紹介されていました。突如ブームを巻き起こしたイタリア発祥のスイーツで原材料はマスカルポーネなのですが、当時加熱する人気に供給が追いつかない事態になりました。そこで急遽開発されたのが不二製油さんのマスカルポーネならぬ『マスカポーネ』でした。「へえーそうなのか」。同じ業界に身を置くばかりか、弊社のスポンサーでもある不二製油さんの製品ラインアップに疎かったこと、恥じ入るばかりです。はい、やっぱり私は “たわけ” ですね。ちなみに、この平成を代表するスイーツの意味は “私を元気づけて” だそうです。

早いもので胃がんで全摘出して3年目となる先日、術後検診で胃カメラを飲んだところ、食道がんが見つかりました。4月に手術が決定したのが今朝の事。そんなタイミングですかさず私を元気づけてくれる家内の機転に感謝です。

病にくじけてふさぎ込む暇はありません。9月に米国ラスベガスで開催される「IBIE2019研修ツアー」を企画しました。最新のパン・菓子製造技術、原材料やパッケージ、最新トレンドが一堂に会する同見本市をはじめ、アグレッシブで充実したプランを組みました。もちろん全日程、私も元気になって引率します。皆さん、ご一緒しませんか?


弊社社長 菅田耕司のコラム


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