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コラム 三寒四温

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密な餃子店

もう45年近く経ったかな。中央線の高円寺駅北口から徒歩5分程、純情商店街の終着となる早稲田通りの2軒手前にある1坪の餃子専門店「赤天」は今も元気に営業しています。

人の良い店主の高田さんは髪と眉がすっかり白くなり、腰が少々曲がってきました。今般のコロナ禍による自粛期間中も店を閉める事はなく、朝9時頃から小さな店内で餃子の皮を伸ばし、餡をつくり、夕方6時頃に開店。現在は「生」と「焼き」のテイクアウト販売のみで9時頃には完売してしまう人気店です。厨房と焼場を半坪ずつで仕切るようにカウンターがあって、椅子は4つのみ。そうです、きっちり4人座ると店内は完全に “密” で、当然窮屈な厨房は高田さん1人だけですでに “密”。という事で3月以降、高田さんと語らいつつ餃子をつまむのはおあずけが続いています。

餃子以外のメニューはビールだけ。高田さんの巧みな話術で初めてのお客さんともすぐに仲良くなれる、月に一度の “密” なお楽しみでしたが今は叶いません。

先週の夕方、持ち帰りの餃子20人前を電話で予約してから店に伺った時の事です。

「菅田さん、紹介したい人がいるんですよ。きっと気が合うと思うんです」

皮に餡を包み込みながら、換気対策で全開の持ち帰り用の窓越しに時折こちらを見ながら話を続けます。

「車好きな人でして。確か菅田さん、以前GTRに乗ってましたよね?」

ふむ、確かに気が合いそうだな・・・そこへ自転車を押して店に来たご婦人が「4人前お願いします」と予約無しの注文。

「すみません、少しお時間いただけますか? 20分くらいかかりますね」
「じゃあ帰りに寄るわ」
「お待ちしてます」

こんな調子で会話を遮るように訪れるお客様が5人。コロナ禍なんのそので相変わらずの繁盛ぶりですが、結局お相手は分からずじまい。

高田さんは名古屋出身で、かつてはフジパン関西のゴルフ場でキャディや雑用をしながら練習生としてプロを目指して腕を磨いておりました。しかし25歳を前に見切りを付け、おじいさんが名古屋市内で開いていた「赤天餃子店」を暖簾分けしてもらい上京。秘伝の赤味噌入りタレと皮から手作りの餃子を武器に、ここ高円寺で開店したのは45年程前のこと。開店当時から私の行きつけなんです。

持ち帰った餃子20人前は冷凍保存。ほぼ1ヵ月で消費します。私の73年の人生において、この餃子を上回る味には未だに出会っていません。自粛前、まだお店で焼き立てを食べられた時、高田さんは初めてのお客さんにタレの調合を指示していました。

「お好みの量のラー油と酢と醤油に味噌を入れて下さいね」

私はラー油の入った瓶の底に沈殿している唐辛子をたっぷり小皿に入れて酢、醤油、味噌を入れて待つのですが、

「あっ、菅田さんの真似したらダメですよ。すごく辛いですから」

私含めて男女4人の客の会話はここから始まるのでした。

「どうしてここまでこだわるの?」という私の問いに、妥協を一切せずに赤天の味を守る高田店主はきっぱりと答えます。

「こだわるのは当たり前の事ですから。こだわりが無かったら赤天は存在し ません」

次々と餡を包み込みながら、少し照れた横顔が素敵です。
この絶品なる餃子に魅入られた見ず知らずのお客さん、そして高田さんと楽しく語らいながら、一日も早くまたカウンターで食べたいと願っています!

弊社社長 菅田耕司のコラム


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